2007年02月04日

『黒いボルサリーノ』 第一話

それは、いささかハードな体験だった。

俺の仕事は企画会社のプロデューサー。会社といっても、中学の同級生で社長兼営業担当のハルオ、メーカーを定年退職して総務関係を担当してくれている吉川さん、セクレタリーでありオレの恋人のチハル、そして俺の4人しかいないちっぽけな会社だ。それでも、ハルオの素晴らしい営業と俺の才能で、俺たちはちょっとしたギャラを手にしていた。チハルは俺より一回りも下だが、機転のきく可愛い子で・・・

いや、そんなことはどうでもいい。昨日のことから話を始めようか。

珍しくハルオが興奮するほどの、どでかいビジネスのプランニングにオレは没頭していた。いつもは俺に任せッきりのハルオも、さすがに気になるらしく、仕上がり状況のチェックをしたいと言い出した。
吉川さんはいつものように定時きっかりに帰っていったのだが、チハルは、コーヒーを入れたり、サンドイッチを買ってきたりして、ずっと俺たちに付き合ってくれていた。
そう、昨日はチハルとデートにいくはずだったのだ。さっさと仕上げて引き上げるつもりだったのだが、結局、ミーティングは深夜までかかってしまった。

チハルを乗せて俺のマンションの駐車場に車をいれ、俺たちは行きつけのバーに向かって歩き出した。この店は、チハルのマンションの目の前にあり、いつもデートの最後はこの店に来ていた。
すっかり遅くなってしまったのに、チハルは怒ることもせず、いつもどおりの可愛い笑顔で俺の心を溶かしてくれる。
明日は近くの公園でCMの撮影があるらしいとか、吉川さんに3人目の孫が出来るらしいとか。
チハルのそんなたわいもない話に耳を傾けながら、この店のジントニックを呑んでいる時間が俺には最高の贅沢だ。俺はこの店での3杯目は必ずジントニックと決めている。
ありふれたカクテルだが、ここのマスターが作るものは一級品だ。しっかりしているが邪魔にならないライムの香り、キンと冷えた口当たり、他の店でこれを超えるものにめぐり合ったことがない。

時計は3時を回り、俺たちは店をあとにした。
チハルのマンションのまえで、お休みのキスをして、俺は1人家に向かって歩き始めた。どうも、足がフラフラしている。マスタがジントニックに何種類のレシピをもっているかなんて馬鹿な呑み方をしたせいか。
マスターには失礼なことをしてしまったかもしれない。今度謝っておくことにしよう。15分ほど歩いて自分の部屋にたどり着いた。
熱いシャワーを浴びてみたが、酔いは醒めない。冷たい水を飲んで俺はベッドに倒れこんだ。

その男がやってきたのは、それから数時間あとだった。

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※この物語はフィクションです 登場人物は実在するいかなる人物とも関係ありません
posted by ラテンでアロハな社長 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | アロハな文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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